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【読書メモ】教えて!カンヌ国際広告祭(佐藤達郎)

私は「検索エンジンマーケティング」という領域で、もう9年近く仕事をしている。これも広告の一つのカタチではあるが、人々が何かが欲しいなと思って、あれこれ検討作業を始め、いよいよ、これはどこに行けば買えるのかな、などと具体的な興味・関心をもって探し始めた人たちを効果的につかまえる、というのが検索に期待される大きな役割である。

一方、みなさんの多くが「広告」と聞いて想像するのは、テレビや新聞・雑誌などに掲載される広告だろう。そして、こうした世界中の広告を集めて行われる「コンテスト」がカンヌ国際広告祭である。カンヌというと、もしかすると映画祭の方がなじみがあるかもしれないが、広告業界の人たちにとって、これは広告界における「ワールドカップ」とも言うべき大きなイベントだ。

私もこれまでウェブサイトで、過去の受賞作(これはバナー広告の例)などは見ていたが、そもそも、モノやサービスを買ってもらうことを促すことが目的である広告を「作品」として評価することにどんな意味があるのか、また、受賞作品は、どういう基準や方法で決定されるのかについて漠然とした疑問を持っていたときに出会ったのが、この本である。

本書は実際に広告祭の審査員となった著者・佐藤達郎さんが、自らの経験を、臨場感溢れるドキュメンタリータッチで書かれているので、広告云々を抜きにしても、とても楽しく読める一冊だ。興味のある方は、ぜひ手に取って読んで頂きたい。

個人的には、広告表現に関する考え方について、日本と世界の「常識」の乖離がどこにあるのか、という点に関する著者の論考が非常に興味深かった。

日本でも世界でも広告における「シンプルさ」が重要とされている点は同じなのだが、著者によると、日本では「表現のシンプルさ」が重視されるため、例えば「1コマ目から商品が登場するようなCM」が分かり易くて良しとされる傾向がある。

これに対し、カンヌで評価される広告とは「メッセージのシンプルさ」であると。だが、そのシンプルなメッセージを記憶に留めてもらうための表現には、一見すると分かりにくいと感ずるほどの「ヒネリ」を加える。筆者はこれを「ナニコレ?のちナルホド!」という書き方で説明している。

実際、欧米の広告会社では、伝えたいメッセージを決めたら、そこからもっとも遠いところからアイデアを考え始め、途中で意味の転換を行い、メッセージに収束させるという発想の訓練を行うのだそうだ。そして、この「落差」が大きいほど、受け手には強い印象を残すことができる、という訳だ。

日本の広告にはこうした「謎解き」の要素が少なく、特に新聞・雑誌や屋外広告などでは、その傾向が顕著であるため、カンヌでもほとんど評価されないらしい。

この話を読んで、2009年の夏にサンフランシスコの街で見かけた、パトロンという高級テキーラの屋外広告を思い出した。時はまさしくFacebookがMyspaceを抜き去り、ソーシャルネットワークサービスの盟主として「独走」を始めていた頃。「SOCIAL NETWORKING」というコピーに思わずニンマリ。。。




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