<< 【読書メモ】成熟期のウェブ戦略(野尻哲也) | main | 新卒で外資やベンチャーに入るのはお薦めしない >>

就職留年は増えて、転職は増えない理由

総務省の労働力調査によると、就業者のうち、過去1年以内に転職を経験した人の割合は5.1%だそうだ。 仮に、全てのサラリーマンが転職するとしたら、20年に1度、つまり生涯のキャリアを通して、1回から2回転職する、というのが「平均像」ということになる。



しかし、実際には、私のように、10年間、日本の銀行に勤めた後、起業するまでに、4つの外資系企業を渡り歩くような人間もいるということを考えると、日本は、まだまだ特別な事情がない限り、転職はしないのが普通な社会、と言ってよいだろう。

実際、総務省の調査資料を見ると、45歳を超えて転職した人のうち、半数以上、55歳以上では、実に75%の人が、転職によって給与が減ったと回答している。つまり、日本における転職の多くは、リストラなどによる「非自発的転職」であり、地位や給与をあげていくことを目的とした「キャリアアップ型」の転職が主流とはいえない。

なぜか。一番大きな理由は、多くの日本企業が、いまだに、終身雇用と年功序列を前提とした給与体系を採用しているためだ。

多くの日本の企業では、年功序列を前提に、基本的には、同じような年齢の社員が同じような地位・役職に就く。このため、同じような地位や役職にある社員に、同じような給与が支払われるようにするためには、社員が毎年新卒で入社して、横一線でスタートを切ってくれないと都合が悪い。

就職が決まらなかった学生が、卒業できる単位を取っているのに、わざわざ余計な学費を払って「就職留年」を選択し、「新卒」を装わねばならない理由もここにある。

最近になって、一部の大企業は「卒業後3年までは新卒扱」とすることを発表し始めているようだが、これも「3年程度の年齢差であれば、給与や地位の逆転が起きても組織としては受入可能」という、あくまでも従来のシステムに基づく価値観に則った判断であり、本質は何も変わっていない。

まして、転職者を中途採用するなど「年齢と給与のバランス」というこれまでの秩序を考えたら、とんでもない話だ。次は部長、役員、そして社長と、臥薪嘗胆で上司や会社の理不尽な要求にも堪え忍んできたのに、どこの馬の骨ともわからないヤツが中途で入ってきて、突然、自分の上司になるなどということは許せない。

だから、新卒採用という制度維持し、中途採用を排除するということは、社長からヒラ社員まで、全てのサラリーマンの利益にかなう、という訳だ。

就職活動中の学生諸君も、「実力主義」だの「適材適所」といったメッセージを声高に叫んでいる企業については、制度面でも、本当に実力ある人間を受け入れようとしているか、という観点で検証してみるとよいだろう。

実際、私も、一時期、日本企業への転職を試みたことがある。だが、話が具体的に進むにつれて、必ず問題になるのは、「給与」ではなく「職位」の方だった。私が希望する給与を払うことは可能だが、それをしようとすると「年齢 x 職位」のマトリックスからはみ出してしまう。

なので、契約社員や嘱託といった形での雇用や、あるいは「XXX室付」といった曖昧なポジションが呈示されることになる。つまり、

我々の「上司」になるための苦行や儀式を経ていないキミには、「お客さん」で居てもらわないと困る

というメッセージだ。

このため、日本でキャリアアップのために転職しようとすると、どうしても外資系企業が中心になってしまう訳だが、今度は「英語」というハードルもあり、日本に進出する外資系企業は、常に「人材難」に悩まされることになる。この話は、また別の機会に。

コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック
calendar
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< December 2017 >>
selected entries
categories
archives
books
links
profile
search
others
mobile
qrcode