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【読書メモ】成熟期のウェブ戦略(野尻哲也)

この本の特徴(「特長」でもある)は、、例えるなら、和洋中からデザート・コーヒーまで、一通りのメニューが、そこそこの味と値段で食べられてまうような便利さ、お得感といったところではないだろうか。

ともかく扱っている題材が幅広い。いま話題のソーシャルメディアや電子書籍はもちろんのこと、検索エンジン・携帯電話といったネットインフラやサービスの話から、フリー・ガラパゴス・プラットフォーム・ライフログといった用語解説まで、ネットやウェブのことを一通り「押さえておきたい」という人には、うってつけの本かもしれない。

今から5年ほど前にベストセラーとなった梅田望夫氏の『ウェブ進化論(ちくま新書)』は、「ウェブやネットビジネスに詳しくない上司に、ネットの価値や重要性を理解してもらうために読ませたい本」などと評されるころもあったが、本書は「今さらウェブやネットに詳しくないとは言えなくなってしまった上司が、部下の前で恥をかかないよう、こっそり読んでおきたい本」といったところだろうか。

それにしても、これだけ多くのネタが、「....といえば」という連想ゲームよろしく、次から次に登場するので、面食らって、ついて来られない読者も出てきそうな感じもするが、楽天・DeNAやゾゾタウン、さらにはZapposやZyngaなど、メディアなどで話題になっている国内外の企業の事例が「接着剤」のような働きをしているせいか、それほど、違和感や唐突感は感じない。

また、これは著者がコンサルティング業界出身のためだと思うが、様々なサービスや概念を、縦横2軸のマトリクス上に配置してみせることで、その位置付けや戦略の違いを、できるだけ単純化し、かつビジュアル的に理解させようという試みも多用されている。

ただ、こうした「分かり易く」するための工夫によって、話が単純化・細分化され過ぎてしまい、その結果、部分的には納得できるのだが、全体でみると少々つじつまが合わない、と感ずる部分もある。

例えば、ウェブビジネスに関する収益モデルの説明で、楽天の強みは、ECから金融まで、様々なサービスを「横展開」していることにあるのに対し、ソフトバンクは最大の資産であるYahoo! JAPANを中心に、川上のブロードバンド〜川下の携帯電話までを垂直に「縦展開」したことにある、と説明している。

ところが、日本でGoogleがYahoo!に勝てない理由の説明については、サービスの国際性と言語性という2軸で整理をしているため、敗因は「ローカライズの不足」にあると結論付けられている。しかし、これは私見になるが、日本におけるGoogleの敗因(=Yahoo!の勝因)は、筆者もまさに指摘している「垂直展開」により、Yahoo! BBでネットを使い始めた初心者・高齢者を、Yahoo! JAPANというポータルサイトに誘導できたことのように思うのだが。。。

とはいえ、こうした副作用は軽微なものであり、前半で採り上げた本書の特長を損なわせるようなレベルのものではない。

ただ、この本を読んで「分かった気」になった上司たちが、付け焼き刃の知識で、見当違いの戦略を立てたり、思いつきであれこれ指示を出して、現場にいる部下たちを困らせることがないか。これは大いに心配である。。。


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