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仕事を中心に色々と考えてみる

大学を卒業し、仕事を始めてから、今年の春で、丸23年になる。

えっ?23年前って、おそろしく昔だよな。大学でアイスホッケーと麻雀に明け暮れていたあの頃が、もう23年も前なのか。生まれてから大学を出るまでと同じ年数、仕事をしていることになる。

大学を出て銀行に就職が決まった時、世の中はバブルの真っ盛りだった。いま、私の会社では、大学生・大学院生のインターンの諸君にも仕事を手伝ってもらっているが、彼らには申し訳ないほど、本当にいい加減な就職活動だった。

当時は「就職協定」なるものがあり、企業が学生と公式に接触し、内定を出せる「解禁日」(なんだかカニ漁のようだが)は大学4年の8月20日頃、と決められていた。だが、どうしてもアメリカに行ってみたかった私は、とりあえず渡米前に「内定」を確保しておこうと、6月頃に、就職協定に加わっていない外資系の金融機関をいくつか回った。

その頃、私の大学から、外資系の金融機関に新卒で応募する学生などいなかったため、殆どのところは、訪問したその場で「内々定」をくれた。おかげで、就職浪人になる心配もなくなった私は、意気揚々と初めてのアメリカに向かったものだ。

そして、2ヶ月半ほどアメリカを見て回り、「解禁日」の早朝に成田着の飛行機で帰国。すると、さっそくゼミ仲間から、明日、三井銀行がゼミ単位で説明会をやるので来ないかとの連絡があった。もっとも、洋行帰りですっかりアメリカンな気分になっていた私は、日本の会社に就職する気はさらさら無くなっていて、どちらかというと、ゼミ仲間に久しぶりに会いたいという気持ちから、説明会に参加した。

有り難いことに、三井銀行にいた大学の先輩方からは、一生懸命、誘って頂いたのだが、なかなか態度を決めかねていた私が、最終的に、この銀行に入っても良いかなと思ったキッカケは、(これまたいい加減で、恥ずかしいのだが)正直に白状すると

"Hello! This is Mitsui Bank"

と書かれた銀行のパンフレットだった。

すっかり「国際金融マン」の気分になった私は、売り手市場であることを良い事に、更に調子に乗って「MBA留学させてくれると約束するなら入っても良い。」などという条件を出してみたら「OK」という返事が。もはや断る理由も無くなり、内定を頂いていた外資系の金融機関の内定を辞退して、三井銀行に入ることになった。(そして、銀行は、約束通り、3年後に私をMBA留学に出してくれたのである。)

こうして、振り返ってみると、本当に恥ずかしくなるほど適当かつ無謀なキッカケといきさつを経て、私は23年前に社会に出たのである。

その後、私は10年間の銀行員生活の後、金融業界を離れ、いくつかの外資系企業でサラリーマン勤めを経験し、そして2006年からは、起業家の端くれとして、インターネットマーケティングに関するコンサルティング会社を経営している。

よく「銀行に入った時から起業するつもりだったのか?」などと聞かれたりするが、とんでもない。前述の経緯を読んでもらえれば分かる通り、「したたかな将来設計」などがあって銀行を就職先に選択した訳でもないし、MBA留学だって、本当にさせてもらえるとは思っていなかった。その時々に、それなりの思いや考え、希望や不安があって、就職や転職、そして起業をしてきた訳だが、だからといって、別に人生の到達ポイントから逆算して、全てを計算ずくで生きてきた訳じゃない。

だいたい、私が大学を卒業した時、携帯電話やインターネットなど誰も使っちゃいなかった。DOS/VとWIndow3.1の登場で、Windowsマシンが普及し始めるのは、私が会社に入って3年目のことである。そんな状態で、インターネットが飯の種になっている今日の姿など、予見できようはずもない。

にもかかわらず、銀行員での10年を含む、その後の会社勤めで学んだことの多くは、間違いなく、様々な形で、自分の糧となって、今日の自分を支えている。だから、私はインターン諸君に対しても、将来起業するにせよ、ベンチャー企業や外資系企業に転職するにせよ、まずは大きな組織の中で仕事をしてみることを強く薦めている。

こうした自分の経験を通して言えることは「この仕事や会社が、自分の将来にどうプラスになるか」などと考えてみたところで、大した意味はない。」ということである。23年前に比べて、世の中の変化するスピードは格段に早くなっているのだから、将来を予見することなど、益々、困難で、かつ意味が無くなっていると考えるべきだろう。そもそも、社会経験もない学生に「想像」できることなど、たかがしれている。思い上がってはいけない。

どんな会社に入るのか、どんな仕事をするのか、それが、将来の自分にどう訳に立つのかなどと考えよりも、まずは、騙されたと思って、入った会社や職場で、与えられた仕事を一生懸命やってみよう。その中で、自分には何ができるのか、自分はやりたいのかが見えてくる。

昨年末に読んだ内田樹さんの『街場のメディア論』という本がある。元々は、タイトルの通り「メディア論」を期待して買った本だが、この本は、著者が大学で行った講義を元に再構成された本ということもあり、実は、学生に対する「仕事論」を説くところからスタートしている。

その中で、著者はこのようなことを言っている。

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「でもね、いきなりで申し訳ないけれど、この『適正と転職』という発想そのものが実は最初の『ボタンの掛け違え』だと僕は思います。」

「与えられた条件のもとで再興のパフォーマンスを発揮するように、自分自身の潜在能力を選択的に開花させること。それがキャリア教育のめざす目標だと僕は考えています。」

「あなたの中に眠っているこれこれの能力を掘り起こして、開発して下さい、というふうに仕事のほうがリクエストしてくるんです。自分のほうから『私にはこれができます』とアピールするんじゃない」

「その能力が必要とされたときにはじめて潜在能力は発動する。」
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

おそらく、一定年数、仕事をした経験のある人なら、どれもこれも、すーっと腹に落ちるだろうが、一方で、全く仕事をしたことのない学生諸君は「本当かいな?」と疑いの目で見るかもしれない。

もちろん、英語でも"Learn the hard way."という言い方があるように、まずは自分が思うがままに動いて、あちこち、壁にぶちあたりながら学んでいくのも、一つの選択肢なので、全てはat your own riskということで。(笑)



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